味の蕾(つぼみ)と書く味蕾(みらい)
その蕾が摘み取られているとしたら
摘み取られた花は
種を残せるのでしょうか
甘い しょっぱい 酸っぱい
苦い 辛い うまい
味蕾が感知する味覚は
生きていくためのセンサーで
先人は生き抜いていくために
様々な選択をしてきました
「味蕾という未来遺産」を
受け継いで 今があります
依存性が過ぎる味付け 保存料
幾名もあるシーズニング 香料
人工甘味料 着色料 化学調味料
たんぱく加水分解物 酵母エキス
自然界ではありえない旨みが
装いながら浸食しています
味覚が発達しなければ
生命の緑は失われてしまう
約10,000個あるといわれる
人間の味蕾はかけがえのない
豊かな森のように思いませんか
どんなことがあっても 森は
再生する働きを宿しているように
味蕾も取り戻すことができます
窒素以外の大気中の酸素は
約22%だそうです
もし 酸素が23%あれば
火が付くと絶対に消えず
逆に19%以下ならば
永遠に発火しないそうです
地球は海が78% 陸地が22%
人間の体も水分が78%
それ以外が22%
このバランスで世界も細胞も
愛和されています
人間の体に本来備わっている
排泄や解毒という自浄作用も
78:22の許容範囲を超えて
しまうくらい食品の荒廃や
食に携わる荒野が進んでいます
一方で 真っ当な良心に沿った
ものづくりに心を込める方々や
何かおかしいと気付いた方々が
増えて蕾は開きはじめています
自分の未来は自分以外の誰かが
作っているのでしょうか
無病という100ではなく
未病という78 のバランスで
心偏ることなく無理もしないで
たった今 自分が選択する
味蕾の中に未来があります
開業当初から
今も変わらない原点があります
私たちが作る食べもの 飲みもの
お店を通して手渡す商品が
お客さまの未来を奪わないこと
食べて下さる方々の健康を
未来を損なわないこと
明日の活力になる美味しさを
探求していくこと
それがいつも根っこにあります
仕事のリズム 家族構成
所得の違い 主義や信念の違い
周囲の環境 生活様式
おひとりおひとり 細妙な
暮らしの背景があります
カフェイン過多や睡眠など
食だけでは補うことができない
複合的な要素も考えながら
長期的にお客さまの生活が
良くなる目線と照らし合わせて
ものづくりを続けています
なぜ 人は緑の中にいると
心が凪ぐのでしょうか
緑の中にいる生きものや植物
美しい現象に出会い共に過ごし
自然の中に身を置いていると
ふと気付かせてくれるのです
不自然なものに真の安らぎはなく
なぜおいしいと安らぐ味なのかを
味蕾を取り戻していけば
体は素直に答えてくれます
味蕾をまもることは
未来を守ること
おいしいの源流は
美しい味に還ること
鳥の美しい歌声が響き渡る
生命がいっぱいの森の中で
「味蕾の中にある未来」
を見つめています
「明日への雫」どくだみ
「遊びにきたよ」かえる番長
「風と」ツマグロモンチョウ
「祈りの森」かまきり親分
さんぽう穀eryの歩み
草履片々 木履片々
ぞうりかたがた ぼくりかたがた
黒田官兵衛(黒田如水)が
息子の長政に諭した言葉で
如水は長政にこう言ったそうです
「片足に草履 片足に木履を
履いた不完全な状態でも人は
走り出さねばならぬ時がある
思慮が過ぎては戦に勝てぬ
特別な意味を考えたり
無駄に考えを重ねるのではなく
時によっては 決断せよ
時は躊躇している間に逃す」
と 如水は長政に 片方ずつの
草履と下駄を手渡したそうです
この言葉は後々知ったのですが
これまでのわたしたちのようで
今も思い留めている言葉です
コーヒー豆を使わない穀琲を
開発して一夜で変えたときも
養菓子や養食を作る手段も
お客さまにとって必ずいいと
直感したら行動に移してきました
向こう見ずな阿呆かもしれません
良い時間を過ごしていただくこと
その舞台であるお店で見られる
笑顔のお陰で続けられています
最高の舞台を整えてご用意するのが
お店の最大の努めと信じていますし
目立つのは苦手で黒子に徹している
方が居心地よく合っているようです
製造するものはもちろんですが
よい一杯を淹れるための工程や
居心地のいい空気を醸せるように
毎日集中と改善を繰り返しています
作り手として大事にしているのは
文字にならないような
工夫やひと手間です
どうやって作っているのだろう?
と思われる味や食感の商品が
当店には多いかと思います
種類や数字を追って時代について
いくことを求めるよりも
御縁あって求めて下さる方々に
どこにもないワンダーな味を
楽しんで頂こうと一心に作るうち
カテゴライズできない独自の
ものが自然発生的に増えてきました
付け焼き刃で作られたものか
お客さまは質をちゃんと
見抜くものだと思っています
非効率でも実直に重ねていけば
きっと言葉を超えて伝わるものが
有形無形の質となって
感動を届けてくれると信じています
このエジソンランプの明かりは
開業当初から灯しているもので
以前は玄関の頭上でお客さまを
照らして迎えてくれていました
移転後の宍粟では厨房とフロアの
境界でお客さまとわたしたちを
つなぐ場所に灯っています
世界で初めてエジソンが発明した
真空管の電球を忠実に復刻した
真空製法のもので現在では
製造されなくなりました
LEDで模倣したものが市場に
出回っていますが本物が放つ
温かみのある柔らかな灯火までは
真似できないのかもしれません
製造所という意味の ery を
屋号に変えたのは2017年 その後
大きく世の中が揺れ動いた間も
明るさを失わず照らしています
出会った人の一日や人生の片隅を
温かく灯してくれるものは何か
今も探求し続けています