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秘蜜のひみつ

 

店主が焼いていたので

ちょいと お邪魔して撮影を

 

やっと お披露目だねぇ‥と

これまでの歳月を思いながら

しみじみと焼き目を眺めました

 

香木であり薬樹でもある

黒文字(くろもじ)が大好きで

鏡野穀琲にも使っている薬樹茶

 

黒文字の底知れない面白さと

天然のかぐわしい香と味わい

 

その個性を活かせるものをと

構想して温めていた菓子案に

本格的に着手した理由が移転で

 

ちょうど 宍粟市に移住すると

決めた2年前のことでした

 

 

この黒文字は岡山の鏡野町で

一枝一枝 山の清らかな伏流水で

洗浄して下さっているもので

全幅の信頼をおく方のもの

 

お茶ならじっくり煮出して飲み

面白いのが 焼酎に漬け込んで

3か月以上熟成させると‥

 

あら不思議

ブランデーのような芳醇な

お酒に見事大変身するのですが

 

長期で漬け込んだ黒文字酒は

飲むだけではなく塗り薬として

傷薬になり昔から重宝するのです

 

手荒れの方をお見受けすると

お節介にも差し上げたりして

けっこう喜んでいただいたり

 

 

でも お酒を効かせすぎたものは

安心して食べていただけない

 

まさしく 店主もそのひとりで

アルコール全般に弱いため

食前酒くらいで顔が真っ赤に

 

そこで考えたのが酒ではない

醗酵でのエキスの出し方

 

折しも 宍粟市の行政PRが

醗酵を推進していると分かって

構想に光が差した瞬間でした

 

お酒に部類されない段階の

米と米こうじの醗酵液から漬けて

歳月をかけて熟成することに

 

 

宍粟に移転してからも密かに

熟成蜜の試作は続けてきました

 

梅酒など果実酒もそうですが

一朝一夕にはできない歳月が

味の重要な醍醐味に変わる

 

菓子にするまでの準備期間に

1年以上漬けて熟成させるので

歳月をかけて作ることになる

 

まったく 気の長いこと

互いに笑いながら試行錯誤して

 

 

やっと できました

 

商品名の「くろもじの秘蜜」は

迷わずに早く決まったのですが

 

特長を分かりやすく伝える

冠名がどうしても浮かばなくて

何週間も迷って悩んでいた私に

 

店主が何気なく ポツリと

「まるでブランデーケーキ」

 

! ! !

あっけなく即決となりました

 

確かにお酒は使っていないので

ブランデーではないけど手法は

同じく蜜を染み込ませている

 

そうか「まるで」なのだと

否定も肯定もない「まるで」だ

店主に天才!」と思わず言った

 

今回の名付け親は自分だと

うれしそうな顔でマウントする

まあまあ 可笑しくて笑う

 

シールや帯のデザインも何とか

ありがとう市までに間に合って

 

バタバタ慌ただしかった最近と

2年の静かな歳月が交差した

 

 

ちょっとした手土産向けに

1本入バックもご用意しています

 

今年からはじめることになった

歳末ありがとう市2023は

御愛顧への感謝の割引と

 

ここへ移住するに至った歳月が

醗酵し熟成した結晶のようで

 

末長く作っていけたらと

今は ゆっくり思っています